米山奨学生 楊超雲君 卓話『 岐路に立つ雲南省の水力発電事業』

20060906

★★★★★★  9月6日  ★★★★★

米山奨学生 楊超雲さん卓話

『岐路に立つ雲南省の水力発電事業』

中国の経済発展と追い付かないエネルギー事情
中国最大の水力発電埋蔵量と開発可能性
野望的な思惑 水力開発により 深刻なエネルギー不足の解消 西部大開発の梃入れと東西格差の是正
賛否両論の思わぬ展開 環境NGOやNPOの根強い反対 “世界遺産”を意味するもの 国際河川という特別な“新しい発見”
着々と進む工事の展開 ほぼ“蚊帳の外”の存在の現地住民 電力会社と地方政府の攻防開発と環境保護のジレンマ
皆様こんばんは、楊超雲と申します。今年4月からロータリクラブの米山奨学生に選ばれてくださり、誠にありがたく存じます、この場を借りて、あらためて感謝の意を申し上げます。さて、今日の卓話なんですが、開発か、世界遺産保護優先かの難しい選択に切迫している雲南省の水力開発事情を紹介したいと思います。皆さまと一緒にこの問題を考え、皆さまのご知恵を貸して下さればと思います。私は雲南省からの留学生であって、当然自分の故郷を愛していますし、たとえ何処で暮らそうといっても、故郷の出来事にも強い関心を持っています、そして、時期が来ましたら、自分の力を故郷に捧げるつもりです。これが今回も雲南省をテーマにした理由です。もちろん、雲南省と言えば、観光や茶文化及び数々の少数民族文明などが日本にも相当紹介されているだろうし、これらについて、少々楽しく話しても宜しかろうかと思われますが、性格上、難しいことを考える癖もありますので、この少々渋いテーマを選ばせていただきました。では、早速本題に入りたいと思います。
なぜ、今ころになって、経済成長に取り残されました雲南省の水力エネルギーが取り沙汰始めたかと言いますと、以下のような理由がありました。1つは中国の経済発展と追い付かないエネルギー事情がありました。中国では急速な経済成長に電力供給が追いつかず、2002年以降毎年のように電力不足が発生しています。昨年は最大2500万キロワットが不足し、国民の日常生活はもとより、企業にも操業短縮せざるを得ないなどの影響がでました。今年も、国家発展と改革委員会の年初段階での発表によりますと、最大1000万キロワット程度の不足を予測していました。このようなことを加えて、エネルギーの構成から見ますと、主要エネルギー源は石炭で、しかも、発電設備も相当の遅れがありますので、大量な二酸化炭素などの排出により、温暖化や深刻な大気汚染が起こし、近年、国際社会から非難されたりするようになりました。従いまして、エネルギーの増産だけではなく、より清潔なエネルギー源を中国政府に求められます。ここで、ますます注目を浴びるようになったのは雲南省の膨大な水力埋蔵量という訳です。勿論、チベット自治区には更に大きな潜在力がありますが、いまのところは、また開発する能力がなさそうです。
では具体的に、雲南省の開発可能な水力埋蔵量および計画はどのようなものがを紹介していきたいと思います。
雲南省の水力資源は、理論埋蔵量は1億364万kWで、全国の15.3%を占めて第3位、開発可能な発電設備容量は9,000万kW、年間発電量は4,500億kW時で第2位です。しかし現在開発されている発電量は発電設備容量の5%程度で、開発の潜在力はまた非常に大きいといえます。
雲南省には長江の支流であります瀾滄江、怒江の2本の国際河川をはじめ数百本の河川が流れています。2本の国際河川は青海省を水源とし、瀾滄江は中国からラオスを経てベトナムでメコン川となり、怒江はビルマでサルウィン河となります。その瀾滄江に西部大開発の重点事業の一つとして、2015年までに、階段式開発で8ヶ所の発電所を建設する計画が進行しています。総出力は1,555万kWに達する予定です。1,555万kWという抽象的数字はやや分かり難いと思いますか、このあいた長江で完成しました三峡ダムの出力は1,830万kWで、年間発電力は日本の全国年間発電力の約1割、或いは九州電力の1つ分だそうです。これらの発電所の能力は三峡の約9割ですので、如何に大きいかがお解かりになったのではないかと思います。怒江も長江の上流である金沙江も同様な計画があります、何れも三峡並みです。しかし、作ろうとした電力は雲南省で消費されるのかといいますと、そうではないです、現に、恐らく当分の間も雲南省だけには消費切れないと思われます。従いまして、殆ど沿海部に送り(一部はタイやベトナムに輸出する)、発電収益の一部を雲南に回すという計画です。これで沿海部の深刻なエネルギー不足が解消し、西部にも産業が振興され、やがて東西格差の是正にも繋がるだろうという強い思惑が政府にはありました。
今まで、中国の治山治水などの公共事業やインフラ整備は基本的に政府主導で推進してきました、これは事業のスムースな進行を意味しますが、環境に対する配慮の欠如や反対意見を許されないなどの批判も浴びれました。勿論、先ほどが申し上げました三峡ダムの時からは、国会でも採決に持ち上げられ、多数の反対意見も出ましたので、大きな前進が言えるのではないかと思います。つい最近になって、環境NGOやNPOなどの団体も声を上げるようになり、一つ大きな勢力を現れました。NPOやNGOの話が出ましたが、ここで少々話しを横に入るかも知れないですが、一言説明したいと思います。
中国は10数年まで前には、文字通り非政府組織は認めていませんでしたし、彼らの多くは西側の反中国勢力に支配されているし、西側の思惑で働いていると非難してきました、しかし、いまは認めるようになりました。そして、特に、環境NGOやNPOの方が大活躍しています。勿論、以上のような計画は反対です。彼らの理由は以下のようです。
ア.ダムの建設にはこの地域の生態圏に影響を及ぼす  恐れがあること
イ.これらの川は国際河川であるので〔長江は違う   が〕下流の国々の利益も配慮する必要があること
ウ.これらの地域は国連の世界遺産にも登録済ですの  で、開発によって、世界遺産名簿から消される恐  れがあること
エ.これらの地域は数々の少数民族が暮らしているの  でかれらの伝統文化を崩壊させる恐れがあること
などの理由が挙げられました。しかし、政府は専門家を依頼して、実践的な研究立場からいずれの理由を否定し、地元地方自治体の協力もできているのが現状のようであります。以上のような論争はこの数年間ずっと続いていますが、いずれも政府、電力会社と環境NGOやNPOの間の出来事であって、地元人民の声を反映することがありませんでしたし、あり得ませんでした。ここで、地元は何を考え、何を望んでいるかと言いますと、正直私も申し上げることができません、しかし、ここで、テレビで見た1番面を紹介したいと思います。これがNHKの番組で、有名な俳優高倉健が中国の映画《千里、単騎を走る》に出演し、この映画が日本にも有名になった後、NHKが健様の2月間に渡るロケ地での生活を追おうと企画したようです。このロケ地は正に先のダムの予定地の1つです。スタッフが800年の歴史を持つ村の長老にこの村はまもなくダムに沈みます、あなたは寂しくないですかと聞きましたところ、長老は皆のためならそれでいいですという宗旨の答えをしたことが今も私は覚えています。
これが恐らく人民の声だろうと思います。 ご清聴ありがとうございました。

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